失敗の本質

経営コンサルタントコラム

2020年4月11日

失敗の本質という本があるのをご存知でしょうか?

よく売れた本ですので、ご存じの方も多いとは思います。

 

大東亜戦争における日本軍の諸作戦の失敗を、組織としての失敗ととらえ直し、現代の組織一般にとって教訓として活用されることを狙いとして出版された本です。

 

ミッドウェー海戦やガダルカナル作戦、沖縄戦など、6つの失敗ケースについて、分析されており、読めば当時の指導層に対する怒りが湧いてくると同時に、あまりにいい加減な戦略に多くの人名が失われたことを思い、悲しくなります。

 

一方、なぜこういったことになったか、失敗したのか、について考えてみると、日本人の特性から生じているところも多分にあるな、と感じるところでもあります。

 

近代的な組織としての日本軍が戦略を策定し、組織として実施し、組織として敗れたわけですので、同じ組織である、会社経営についても、これを教訓として応用できないはずもありません。

この失敗から学べるはずですし、学ぶべきです。

 

では、なぜ日本軍は失敗したのか。

 

先ず考えられているのが、戦略上の失敗です。

失敗の内容としては、グランドデザインの欠如した、あいまいな戦略目的や、長期的展望の欠如した短期決戦の戦略志向、また、空気が支配するような、主観的で帰納的な戦略策定などがあげられます。

 

つまりは場当たり的な対応で、出口戦略などないんですね。

最後は気合でどうにか、みたいな、相手が嫌がって逃げるんじゃない?みたいな、ぬる~い思考です。まあ、そういう結論にしておかないといけないような空気があった、ということなのでしょうが。

 

なんかどっかの会社でもこんなことがあったような・・・

 

戦略を描く役割である参謀本部にいる人間は、頭の良い、エリート中のエリートです。それでもその場の空気感などで非合理的な方向に事が進んでいくんです。

 

日本人が得意とすることは、現場発、状況毎の場当たり的対応と結果の積み上げです。現場が強いんですね。なので、兵士の技術レベルの高さで、戦略のまずさで陥った不利な状況を乗り越えてきちゃう。すごいんですけど、失敗が見えなくなる副作用もあったりするわけです。

 

それと、失敗の理由としてあげられるのが、情報の軽視です。

情報を軽視し、主観的な戦略策定を行ったことにより大失敗しました。

「いけるといったらいけるんだ!!」みたいな話ですね。

これで失敗して多くの人命が失われるんですから、ほんと悲しいです。

 

無理が通れば道理が引っ込む、そして失敗。。

メンツを気にして、派閥を考慮して、出世に響くから、、

まあ、よく目にすることではあるのですが。。

 

狭くて進化のない戦略オプションも失敗の要因でした。

戦闘の失敗は戦術で補えず、戦略の失敗は戦術で補うことはできません、つまり、最適な戦略を戦略オプションの中から選択するのが重要な課題であり、戦略オプションの幅が狭いのは大きなマイナスなのです。

 

本書では、視野の狭小化、想像力の貧困化、思考の硬直化などが戦略進化を阻害し、戦略オプションの幅と深みを著しく制約したとしています。

 

負けることを前提とする議論がタブー視されたり、組織のなかに論理的な議論ができる制度と風土がなかったこと(言葉を奪ったこと)が、戦略策定が状況変化に適応できなかった理由と思われます。

 

日本人特有の言霊的思考が合理的判断を妨げた、とも言えるかもしれません。

 

戦略だけでなく、組織的にも問題がありました。

組織上の問題点として、

 

・人的ネットワーク偏重の組織構造~集団主義による意思決定の遅れ

・学習を軽視した組織~失敗の蓄積、伝播を組織的に行うリーダーシップ、システムの欠如

・結果よりもプロセスや動機を重視した評価

 

があげられています。

 

根性論は場当たり的な成果を生み出すことはあっても、全体的には負けるのが道理です。最後には「負けて潔し」、なんて、論点のすり替えでしかないですよね。それでたくさんの方が亡くなられたわけですから、なんて悲しいことか。。

 

本の最後には、現代の日本的企業組織のあり方について、新たな環境変化に対応するために、自己革新能力を創造できるか、と問いています。

 

会社も人の集合体であり、組織です。

失敗から学ぶことで、強い会社を作ることができます。

なんでも経験から学ぶことは大きいですが、失敗については、出来れば経験からではなく、他者や歴史から学びたいところです。

失敗を無理に経験したくはないですからね。

 

どうでしょう、失敗の本質、ご興味いただけましたでしょうか?

夏休みはもう終わりのころかと思いますが、ぜひご一読いただければと思います。