売掛金担保融資の特徴と注意点

経営コンサルタントコラム

2016年7月5日

売掛金担保融資というのは、お金を貸すときの担保が不動産ではなく売掛金である融資です。

略語でABL(エービーエル:Asset Based Lendingの略)ともいいます。

 

不動産でもない売掛金がどうして担保になるのだ?

 

という疑問が湧いた方、鋭いです。

 

不動産は登記制度がありますから、担保に入れると担保付けましたよ、という表記が登記簿の乙区というところになされます。明確ですね。

 

実は売掛金にも登記することができる制度があるんです。

 

原則、売掛金を担保に入れるときは相手方(売掛金を払ってくれる人)への通知や同意が必要になります。

通知となると、売掛金まで担保に入れてお金借りるなんておたく大丈夫!?みたいな不安をお客様に与えてしまうことにもなりかねません。

それだとなかなか手が伸びないですね。

 

そこでその解決策として、売掛債権を債権譲渡登記という方法があります。

これにより、売掛先に通知を出さずに売掛金を担保化することができます。

ただ、登記なので誰でも見ようと思えば見ることができますので、積極的に与信情報と取ろうとしている先には気づかれる場合もあります。

 

担保に使えないのは、取引基本契約上、債権譲渡禁止の特約がある場合です。

そもそも譲渡ができないので、融資する側が売掛金を以て資金回収できません。

大企業との取引基本契約では大抵記載されていますので、この点は要注意です。

 

さて、この売掛金担保融資(略称ABL)、金利は少々お高めながら、銀行では対応してくれないようなタイミングでも融資検討してくれる、ありがたいサービスです。

 

普通、銀行が対応してくれないとなると、次にお願いするのはノン・バンクさんです。ただ、ノン・バンクさんでは不動産担保を求められることが多いです。

つまり、不動産を持っていなければ、なかなか難しいということですね。大きい金額についてはほぼ不動産担保ローン的な商品だけです。

 

となると、不動産を持っていないか、あってもすでに担保がべったりとついているようなものしかない状況(こういう場合が多いですね)では、もう「借りる」という選択肢はなくなるわけです。

 

普通であればナイナイづくしの状況からの救世主的存在がABL、売掛債権担保融資なんです。

なので、再生の局面や起業時、業績が急伸しているタイミングなどで非常に重宝できるサービスです。

 

実際にどんな業種の方が利用されているかというと、卸売業、運送業多く他製造、印刷、広告出版、警備・人材派遣などが続くようです。

 

その内容は、リスケ中であったり、債務超過であったり、税金や社会保険料を滞納していたりと、なかなか大変な企業さんです。

 

やはり、先に言った通り、このような状況ではなかなか銀行さんが相手にしてくれないですから、ABLが最後の砦となっているんですね。

 

といっても、いいことばかりではありません。

 

使い勝手は良いものの、銀行よりは金利が高いのは事実。

どのくらいかというと大体年利10%程度です。銀行の金利が今時分、2%とかの世界ですから5倍の経費負担ですからなかなかです。

 

ただ、10%といってもあくまで年利です。6か月で完済すれば半分の額ですみます。利率という意味では変わりませんが、絶対額は小さくなるわけです。

 

例えば、仕入から製造するまでに2カ月、入金が納品締め後翌々末とすると3か月、1カ月余裕見てトータル6か月。半年あれば借入から返済までできますね。

 

実際に計算してみましょう。

 

1000万の契約ができて、粗利が25%、販管費が10%の負担とします。

仕入資金はすべて借入で賄ったとして、その金利は年10%、借入期間は半年。

 

とするとこうなりますね。

 

売上 1000万

原価 750万

粗利 250万

販管費 100万

営業利益 150万(15%)

支払利息 37.5万(750万×10%×6か月/12カ月)

経常利益 112.5万(11.3%)

 

販管費を賄えて、収支もプラスになりました。

 

手許資金が150万あったとして、お金の流れを時系列で見てみましょう。

 

借入時(入)750万 手持ち1000万

 ↓

仕入時(出)750万 手持ち150万

 ↓

販管支払時(出)150万 手持ち0万

 ↓

売上入金時(入)1000万 手持ち1000万

 ↓

返済時(出)元本750万 手持ち250万

   (出)金利37.5万 手持ち262.5万

 

うまく回せましたね。

 

 

では粗利が15%だったらどうでしょう?

この場合こうなりますね、

 

売上 1000万

原価 850万

粗利 150万

販管費150万

営業利益 0万

支払利息 50万

計 △50万

 

おっと、50万足りません。不足分は更に資金捻出しなければなりません。

これはいけませんね。やるだけ赤字です。

粗利が低いビジネスでは、金利負担が企業の生死を左右しかねません。

 

ABLも状況によっては非常に便利で使い勝手が良いものですが、あくまで「ご利用は計画的に」いたしましょう。

 

 

池田