倒産と税金

経営コンサルタントコラム

2016年8月1日

今回は第二次納税義務についてお話していきたいと思います。

 

第二次納税とは、ざっくり言いますと、滞納分を直接納税者でない人から徴収することです。

もちろん納税者でない人といっても、全く無関係の人ではなく、なにがしか関係している人です。

 

でも、納税者ではありません。

納税者でないのに徴収されるのですから、される側はたまったものではありません。

 

また、レアケースかというとそうでもなくて、再生とか廃業とかの局面ではよくある話です。

税務署をなめてかかると「やばい」ですよ~。

 

☆借入は、連帯保証さえしなければ、社長が個人として返済する必要はない。

 

会社で借りているお金は、会社に返す義務があります。

会社にお金がなくなれば、会社に貸したお金は回収できなくなります。

会社が返済できなくても、経営陣が代わりに返済する必要はありません。

返済できなくなった理由が、いくら経営手腕の問題だとしても、経営陣が返済について責任をとる必要はありません。

 

なぜかというと、借入の契約はあくまで貸す側と会社との契約だからです。

 

ただ、会社の盛衰は経営陣の手腕に依るところが非常に大きいです。

なので、貸す側は経営者の手腕を見極めようと努力して、貸すか貸さないかの判断をします。

特別な資産やサービスをもたない中小零細企業では尚更です。

「この社長なら大丈夫だな」と思えない限りは貸せません。

 

とはいえ、いくら努力しても100%見極めることはできませんし、大丈夫だ、と思える社長さんばかりでもありません。

 

あまりに厳しく見てしまうと、お金を貸して金利を得る、というビジネス自体ができなくなってしまいます。

 

そもそも完璧な人というのは世の中にいないのが常ですし、そのような人には誰だって貸したいわけで、これまた商売的には微妙です。

何事もリスクとリターンの関係は変わらず、ハイリスクにはハイリターン、低いリスクには低いリターンと相場決まっています。

 

商売的には、皆が貸せないと思うような人にいかに貸すか、のチャレンジが儲けを生むことになりますが、銀行などで動かせる資金量が巨額だと、超低金利にしても、絶対額としての利息額が大きくなります。

 

低い金利(=ローリスク)でも全体として儲けは十分でるので、銀行さんは貸し先を選ぶことができることになります。リスクを負う必要がないわけですからね。

 

借りる方としては、信用のレベルによって、銀行→ノンバンク→サラ金・街金→闇という流れになります。

この流れが進めば進むほど金利は高くなります。

 

話を戻すと、経営者を完全に見極めることが難しいので、担保をとり、貸したお金を保全するわけです。

 

何か不測の事態が発生したら、担保をお金に換えることで、貸したお金が戻ってくるようにすれば安全です。不動産担保なんかはよくある物的な担保ですね。最近だと売掛金担保でお金を貸す仕組みもあります。

 

人的担保としては、連帯保証です。

会社が借入をするときは、大抵代表者が連帯保証し、連帯保証人となります。

 

なぜ代表者が連帯保証しないといけないかというと、中小企業の場合は会社の資産と個人の財布がほぼ一緒の公私混同状態が多いからです。

会社の資産と個人の資産の区別がつきにくいというのは、お金を貸している側からすると、困る話ですよね。

資産が多く安全だと思われた会社にお金を貸したのに、その資産をどんどん社長さんが個人の持ち物にされちゃう。

 

つまりは、回収しづらくなってしまう。

なので個人の連帯保証を求めることになります。

 

ちなみに、上場すると個人の連帯保証は基本的に外れます。

そういった公私混同が会社運営の仕組み上できなくなるからです。

 

また最近は、経営者保証ガイドラインの制定にともない、むやみに連帯保証とるんじゃないよ、と役所が指導してます。

 

ついては、財務的に問題ない会社さんは非上場でも連帯保証を外してくれる可能性は高いです。

返済に問題があるわけでなければ、あくまで名前だけの問題なので、外す手間だけ面倒、という気もしますが、連帯保証欄に名前があること自体が気持ち悪い、というかたは金融機関に言ってみるのもいいでしょうね。

 

一般的には会社が借金を返せなくなると、連帯保証人である代表者に返済をお願いすることになります。連帯保証をすると、会社で借りているものを代わりに返さないといけなくなります。

 

大抵の人は返せないので、話合いで解決するか、破産してスッキリするかいずれかになります。

ちなみに会社が破産する場合は、連帯保証人である代表者個人も破産することが一般的です。

 

上記のように、借り手が会社の場合、経営者が代わりに返す必要はないが、連帯保証すれば話は別、というのが一般的な話です。

 

 

☆税金は滞納している人の関係者にも払えといってくる

 

しかし、税金の場合は話がちょっと変わってきます。

連帯保証などしていなくても、「代わりに払え」と言われることがあるんです。

 

これを第二次納税義務といいます。

 

この制度は、徴収不足がある場合に特定の第三者(当事者でなく、第三者!)に補充的に納税義務を負わせるものです。

 

いくら徴収したいといっても第三者から徴収しちゃうってちょっと豪快にもほどがありますよね。そこで、その運用については、以下の点にようよう注意してかかれ、とあります。

 

(1)第二次納税義務の成立要件についての事実関係及び徴収不足であるかどうかの判定

(2)第二次納税義務を負うべき者であることの認定

(3)第二次納税義務の限度の判定

 

読めば至極当り前ですが。。

 

第二次納税義務とは、ざっくりいうと、納付不足額についての連帯保証みたいなものです。

で、その連帯保証すべきかどうかは税務署が決める、と。

 

これはこわい。

 

前述の連帯保証はなんやかんやいいながら自分の意思でハンコ押すわけです。

嫌なら押さなきゃいいわけで(借りられないとは思いますが)、そこにはちゃんと自分で決めた、というプロセスと何かのときには来るよな、という覚悟・意識があるわけです。

 

でも第二次納税義務については、それがない。

税務署が「あいつから徴収しよっ」て決めるわけですから。

御無体なって話です。

 

☆第二次納税義務を負う人とは

 

とはいえ、いくら第三者といえども、やたらめっぽうに第二次納税義務を負わせる話でもありません(当たり前ですが)。

 

第二次納税義務を負うとされているのは、

 

1.無限責任社員

2.清算人等

3.同族会社

4.実質課税額等

5.共同的な事業者

6.事業を譲り受けた特殊関係者

7.無償又は著しい低額の譲受人等

 

となっています。

 

無限責任社員はいいですね、なにせ無限責任ですから「負うだろうな」ということは容易に想像できます。

 

清算人は、納めるべき税金が残っているのに、配当しちゃった場合などに代わりに払えといわれます。配当を受けた人も同様に払えといわれます。

 

そもそも配当はすべての債権債務を清算したあとのものなので、清算漏れして払ったのを戻してもらうイメージでしょうか。

 

ただし、その限度は、清算人については分配又は引渡しをした財産の価額、配当を受けた者はその受けた財産の価額の限度になります。

 

配当を受けた人については受けた分だけの話なので問題は少ないでしょうが、清算人はそうでないのでたいへんです。

 

とはいえ、中小企業の場合は100%オーナー社長なので、清算人も配当を受けた人も同一人物となることが多く、問題は少ないかもしれません。

 

同族会社というのは、個人が税を滞納していたときの話、その個人が同族会社の株式なり出資なりを持っていた場合に関係するものです。同族会社の株などは換価できないので、代わりにその会社さんに払ってもらう、という仕掛けですね。

 

実質課税額等とは実質所得者に対する課税についての第二次納税義務ということです。

実質所得者課税とは、、

 

(実質所得者課税の原則)

第一二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

 

ということで、実際にお金を手にするひとに対し課税するよん、という原則です。

この実際にお金を手にした人が税金を払わない場合の第二次納税義務者は、実質でなく、法律上その収益が帰属する人になります。

 

なので、軽い気持ちで名義貸しをしたら、貸した相手が税金払わずドロン、とかそんなことになると(よくある話)、税金がやってくることになります。

 

金額もろくすっぽチェックしないで名義貸しなんぞすると、どかんと税金がやってきて、知らないでは済まされないことになります。

 

こわいですねぇ。気を付けないといけません。

 

 

☆良かれと思ってやったことが仇になることもある

 

共同的な事業者とは、会社の事業の遂行に重要な財産を所有している人のことで、同族会社の株主又は社員が対象になります。

 

その財産から会社が収益を得ている場合で、会社が税金を滞納すると、同族会社の株主と社員はその財産を限度に第二次納税義務を負います。

 

これすごいですよね。

 

極端にいうと、親族から店舗借りて営業してたような場合、税金滞納したらその貸してくれた親族に行くって話です。

 

実例もありまして、

「織物業を営む納税者が、同族会社の株主あるいは社員から事業の遂行に必要な大部分の織機その他の機械設備を借受けている場合のその財産。」

を重要財産として第二次納税義務を負わせた例が出ていました。

 

これは正直ちょっと意味がわかりません。

財産を貸している人がなんか悪いことをしたんでしょうか?

貸したことの対価を得ているか否かは判断基準にはならないようで、あくまでその財産の限度でとりにいくようです。

賃貸料をもらえていた場合はいざ知らず、ただで貸してあげていたような人は完全に貸し損ですね。

 

まったくひどい話です。

 

貸してる相手が税金を滞納してとんずらしたら、税務署にとられる前に早々に貸しているものを回収しましょう。

 

☆事業譲渡で税金逃れはできない

 

事業を譲り受けた特殊関係人とは、事業譲渡で事業を譲り受けたのが、譲渡会社の関係者だった場合のことです。

 

イメージできるのは、第二会社方式などで譲渡会社に税金を残したまま、新会社へ事業譲渡したような場合です。

 

この場合、新会社は譲渡会社と特殊な関係にあることが多いです。

譲渡会社の息子さんや奥さんが新会社の社長をやる場合もありますね。

 

これは、ほぼほぼ法人格否認的な話ですね。

昔は結構債務逃れのために使われることが多かったスキームですが、今はそういう目的のためには使えません。使う場合は、あくまで債権者の同意を得ながらになります。

 

税金面でも事業譲渡を税金逃れスキームとして使えない、ということになってますので、あまり無理はしないようにしましょう。

 

ただ、ちゃんとした事業譲渡であれば税金に追いかけられたり、債務免脱だといわれることはありません。また、追いかけるには1年以内の滞納分だったり要件もいろいろあります。

全部が全部追いかけられるわけではないので、慎重なチェックが必要ですね。

 

無償又は著しい低額の譲受人等が第二次納税義務を負うとは、税金を滞納などしている人からその資産をタダやメチャ安でもらったりした人に徴収にいく、ということです。

 

そもそも税金払えないほどお金がないのに、ただで資産をあげたりするのは、資産隠しや逃れの意図以外にないという判断です。

 

税金で差し押さえ来ちゃうから不動産の名義だけ変えちゃえ!とかやるようなお方、たまにお見受けしますが絶対バツです。

 

名義だけ変えても新名義人が第二次納税義務を負うことになりますので、まったく意味がありませんし、贈与税なんかもかかってきちゃったりして、泣きっ面にハチ状態になること間違いなしです。

 

以上、第二次納税義務を負う可能性がある人について見てきました。

 

見ると税金を残して逃げ切ろうってのは無理な感じがわかろうかと思います。

とくに再生のタイミングですと、滞納税金はとても大きな問題になりますから注意が必要です。

 

経営者の方は銀行さんには気を遣うのですが、税務署にはやたら強気だったりする方が多い傾向に見受けられます。しかしホントにこわいのは税務署です。

 

彼らは損得抜きに取りに来ます。

銀行は商売でやってますので、経済合理性という価値観が基本的にあります。

つまり、取れないとこにはいかない、わけです。

 

税務署はたとえ火の中水の中、少しでも取れると思えばずーーーーと追いかけてきます。

動くだけコストかかってるんだから、無駄じゃない?という判断はそうそう簡単にはされません。正直しつこいし、コワイです。いきなり差押したりしますし。

 

ただ、きちんと対応さえすればそこまで無茶なことはされません。

ちゃんと説明し、わかってもらうことが原則、唯一の解決法です。

 

逃げようとしないのが解決のコツです。

逃げれば追われます。

誠実に対応していきましょう。すれば自ずと道は開けます。

 

池田